先輩の声
石塚 貴周(2007年度入局)
私が精神科への入局を決めたのは、2年間の卒後臨床研修が終了する直前でした。幾つかの科で迷っていた私が精神科を選ぶ決め手となったのが、当科を研修した際に、「精神科におけるエビデンスに基づく医療」を学んだことでした。振り返ってみると、その頃の自分にとっての精神科のイメージは、いわゆる「精神療法」であり、現代的な医療とはやや異なったものに感じていたのかもしれません。精神科は「心」を扱う科ですが、「心」と体は密接な関係があり、病気の背景には脳や身体、そして遺伝子までもが関係しています。「精神科医」はそれらを総合的に考慮し「医療」を行わなくてはならず、「精神科は人を診る科である」ことを当時の教授である佐野輝先生やグループ長であった中村雅之先生に教わり、精神科の見方が変わったのを覚えています。また、精神科疾患は、他科の疾患に比べてその原因や根本的な治療法などが解明されていないものが多く、そこに科学的な興味を持ったというのも精神科を選んだ理由の一つでした。
私は2007年に入局し、今年で入局14年目になり、精神保健指定医、日本精神神経学会専門医に加えて日本老年精神医学会専門医も取得しました。精神科は、統合失調症やうつ病などから発達障害、てんかん、認知症に至るまで幅広い疾患を担当しています。当科では精神科医として様々な疾患に対応できるよう、直接的な上司であるグループ長を中心に指導してもらえますが、専門医を取得した後は、興味を持った分野を掘り下げることもサポートしてもらえます。私は大学院の研究テーマが認知症だったことが縁で、認知症をサブスペシャリティとし、現在はもの忘れ専門外来なども担当させていただいています。
精神科は直接的に生死に関わる病気は少ないですが、その反面、社会生活に大きな影響を及ぼし、その人の人生を左右するものが多く、精神科医にはただ単に病気を治すだけではない重要な責任があると思っています。それは、精神科医としての苦悩でもありますが、大きなやりがいでもあると思います。また、患者さんの治療にとどまらず、患者さんから多くのことを学び、自分自身も成長させられる、そんな科でもあると実感しています。
医局の雰囲気は明るく、和気藹々としており、先輩・後輩の仲もよく、中村教授を中心に相談しやすい職場だと思います。信頼できる先輩方に出会えたことで今の自分があると思っているので、自分自身もそのような先輩になれるよう努めています。
また、季節ごとの行事を大切にしている医局でもあり、花見や医局旅行、ビアガーデンでの暑気払いなど、医局員同士やコメディカルスタッフなどが楽しく交流出来る場をもうけ、チームの結束を強めています。看護師など病棟の仲が良いことも自慢の一つであり、若い先生方にとって、とても働きやすい環境だと思います。
精神科は患者さんと話すことが基本ではありますが、患者さんと向き合い、そしてこころに寄り添うことが最も大切であり、喋りが得意でなくてもその気持ちがあれば大歓迎です。古い言い方になるかもしれませんが、立派な精神科医になるには「修行」が必要だと思います。その「修行」をどこで最初に行うかは非常に重要な選択であり、当科ではすばらしい環境が整っていると実感しています。興味を持っていただけたら是非ご相談ください。
冨永 佳吾(2015年入局)
私は、生まれも育ちも鹿児島で、鹿児島大学を卒業し、鹿児島大学病院の研修プログラムを経て、2015年4月に入局をしました。
過去を思い返してみると、学生の頃も研修医になってからも自身が専門とする科について決めかねていました。少しネガティブな話にはなりますが、どの科で研修をしても、自分はこの科でこの先何年もやっていけるのだろうか?という気持ちが先行し、研修が終了した後の自分の姿についてイメージが湧かず、困っていたのをよく覚えています。
そんな迷いや困惑で一杯になっている時期に鹿児島大学病院の神経科精神科で研修を受けました。人のココロを扱っている科だからなのか、元々そういう人達が集まっているからなのか、医局の雰囲気がとても柔らかく、当時の私にはとても居心地が良いと感じられました。また、治療者の主観が入りやすく、曖昧な取り扱いをしてしまいがちな精神科領域の問題に対し、患者さんが抱える問題を深く理解、分析し、その上で確たる客観的根拠に基づいてアプローチして行こうという姿勢が、佐野先生(当時の教授)や中村先生(現教授)を中心として医局全体にあり、そのことがとても印象的でした。私は、ここでしっかり勉強をして先輩方と同じような医療人になれるのならば、この先何年も医師としてやりがいや自信を持ってやっていけると思い入局を決意しました。
入局後、3年間大学病院で精神科医としての基礎を学びながら、専門医や精神保健指定医の取得を念頭に研修を行い、その後、7年間県立姶良病院で精神科救急その他幅広い精神疾患の治療に携わり、2025年4月に大学病院に戻って参りました。大学病院での診療は、グループ制をとっており、入局当時のグループ長をはじめ、諸先輩方には、文字通り手取り足取り精神医学のいろはを教えていただきました。教えていただいた一つ一つのことは、今も自分の精神科医としての大事な基盤になっています。
この文章を書いている時点で、私は精神科医を名乗るようになって10年が経っており、まだまだ学ぶべきことは多い身分ではありますが、一方で徐々に教えられる立場から教える立場にならないといけない時期が来ております。正直なところ、当時の先輩達と同じように後進の先生方を教え導くことができるかは甚だ疑問に思えますが、自身がこれまでに培ってきた経験をしっかりと伝えながら、足りない部分は一緒に成長していこうという気持ちで日々桜ヶ丘の坂を登っております。
池畑 樹(2019年入局)
いま、このページを開いたあなたへ
「精神科は、とても興味深く、面白い。共に診て、学び、成長しましょう。」
2019年度入局の池畑です。私は現在、身体診療科と精神科をつなぐリエゾン精神科医として病棟を回りつつ、社会人大学院で臨床研究にも取り組んでいます。
精神科に引き寄せられた最初のきっかけは学生時代の精神科の教科書でした。背景の異なる統合失調症の患者が示し合わせたように、「自分の悪口を言われる」「電波攻撃を受けている」といった幻聴や妄想を訴えるのか、その脳内のメカニズムに興味が湧き、精神科を意識するようになりました。研修医時代は外科系を集中的にローテートし、「外科に進むのか」と冗談を言われるほどメスを握っていましたが、私が本当に惹かれたのは、病気が治った先の日常生活まで視野に入れた治療でした。救急外来で多彩な精神科症例と出会い、冷遇されがちな彼らに真正面から手を差し伸べる専門家が必要だと痛感し、精神科へ進む覚悟が固まりました。
精神科が向き合うのは、ガイドラインだけでは解決できない生活の中から噴き出す困難です。幻覚・妄想・気分変調─これら症状の背後には、生活史・対人関係・社会環境、そして神経生物学的脆弱性が幾層にも重なっています。複雑に絡みあった糸をほどき、患者さん自身も気づいていない回復の手がかりを見つけ出すこと──それが精神科医の醍醐味であり責務だと考えています。
もっとも、私たちが対峙する問題の中には一筋縄ではいかないものも少なくありません。鹿児島大学病院神経科精神科では、一人の患者さんに十分な診療時間を確保し、多職種で症例を徹底的に議論したうえで、最終的には主治医が治療方針を決断します。このプロセスを通じて責任ある臨床家としての基盤が鍛えられ、患者さんにとって最善の精神科治療を提供できます。
2020年の新型コロナウイルス感染症の流行を境に、社会は大きく姿を変えました。対面機会の減少とオンライン化による孤立感の増幅、若年層のメンタルヘルス問題の顕在化、そしてAI技術の急進がもたらす新たなストレス――これらは精神科医療に新しい課題と使命を突きつけています。大学病院での研究活動や勉強会は、常に最新の知見に触れ、自身の臨床を刷新する好機です。変化の時代だからこそ、柔軟な発想と確かな臨床力を備えた仲間が必要です。もしあなたが未解決の「こころの謎」を解き明かす旅に心を動かされたなら、どうか私たちの輪に加わってください。新しい精神科医療を共に描ける日を楽しみにしています。
近藤 哲也(2022年入局)
こんにちは。入局4年目の近藤哲也と申します。この度有難いことに執筆の機会をいただきましたので、少しだけ当医局の魅力について語らせていただきます。
最大の魅力は何といっても個性豊かな医局員の面々です。私は鹿児島大学出身であり、学生時代の実習で精神科を回ったのですが、その時に抱いた感想は「面白い人が多いな」でした。その後、地元の北九州での研修医を経て当医局へ入局させていただいたのですが、入局してみて抱いた感想は「面白い人が多いな」でした。ふざけていると思われるかもしれませんが、そのくらい多種多様な趣味嗜好を持った人間の多い医局だと思います。もちろん「良い意味で」です。これは意外と大事なことで、飽きずに見ていられる人たちの中で仕事や勉強ができることはモチベーションという点で大きなメリットになると思います。
もちろんキャリアの面でもたくさんの魅力があります。精神医学の面白さについては私のような若輩者が語ることではないかもしれませんが、患者さん一人ひとりの人生に触れられることは大きな魅力だと思います。色々な患者さんの話を聞いていると、自分という存在の矮小さを痛感させられます。精神科というとイメージが付きづらい方も多いかもしれませんが、老年精神や児童精神、リエゾンなど様々な分野があり、意外と色んなことをやっています。勉強しているうちに必ず自分のやりたいことが見つけられると思います。私が保証します。
少しでも当医局に興味を持っていただけた方は、是非一度見学に来てください。お喋りだけでも大歓迎です。喋らなくてもいいです、見るだけでも大歓迎です。お待ちしております。
新井 薫(2014年入局)
外部リンク:日本精神神経学会「精神科医のキャリアパス」